Focal Utopia NPの第一印象レビュー

eyecatch-Focal Utopia NPの第一印象レビュー

Focal(フォーカル)のUotpia NPを購入しました。ファーストインプレッションを書きます。

購入理由

長いので、他の機種と比較しても迷いのない方は読み飛ばしていただいて大丈夫です。最初に購入理由を箇条書きすると以下の通りです。

  • ピュアベリリウム振動板のヘッドホンがほしい
  • 開放型を拡充したい
  • 低音の量感がある程度ほしい
  • Woo Audio WA33との相性がよいこと

Focalはドライバーユニットへのこだわりを連綿と受け継いでおり、Utopiaはピュアベリリウム振動板の使用に特色があります。イヤホンですがFinalのA8000を所持しており同じくピュアベリリウム振動板を採用しています。ピュアベリリウム振動板をためした感覚として音の透明感や浮き上がり方に魅力を感じました。
一方でベリリウムの加工や取り扱いは難しく、ヘッドホンでピュアベリリウム振動板を採用した機種は限られます。ピュアベリリウム振動板だけで音が決まるわけではないですが、他機種の検討もしつつフィルターの条件の1つとして盛り込みました。

開放型の拡充と低音の量感については、D8000やATH-ADX5000、HD8XXなどを検討しました。いずれもピュアベリリウムではないですが魅力のある機種です。手持ちはD9200、T1 2nd、K702、ATH-AD2000などであまり低音の出る機種でもなく、高価格帯では1台も開放型がない状態で、使い分けを目的にこのフィルターを入れました。開放のHD8xxは低音のところで気にかかり除外しました。ATH-ADX5000は重量が軽い気軽に使いやすいのですが低音や音質面で除外しました。FinalのD8000の低音はとても満足いくものですが機材との相性の問題か中高域がD9200のほうがきれいに聞こえてしまい今回は除外となりました。Utopiaは開放型ですが低音もしっかりでて、D9200とも明確に使い分けできるので残った次第です。Stelliaも選択肢として考えたのですが、開放を優先したく外しました。

WA33の相性は正直なところ手元の環境で試聴できていません。一方で、WA33とUtopiaの両方を持っている珍しい方が国内外におり、アンプとの相性が出やすいといわれるUtopiaでも相性OKとのコメントを見つけました。少しリスクはありますが、ダメならいずれ真空管以外のアンプを拡充しようかと思いUtopiaを選びました。

開封


FOCALのダンボールを開けると重量のある黒い化粧箱が出てきます。上下にスライドすると開封できるのですが、重みでスライドしてしまうので落としてしまわないように慎重に取り出してください。

取り出すとキャリングケースとケーブルなどが入った箱が出てきます。キャリングケースの中にUtopia本体が入っており、3.5mm(標準変換用ネジ付き)→LEMOコネクタ(1.2m)が同梱されています。

ケーブルボックスのほうにはXLR(4Pin)→LEMOコネクタ(3.0m)と3.5mm→標準変換プラグが入っており、ユーザーマニュアルなどが入ったレザーケースも同梱されています。


LEMOコネクタ本体にL/Rの記載があるので、Utopiaの左右chに対応するようにコネクタを付け、アンプにつなぎ試聴をはじめます。

ファーストインプレション

機材の接続状態

この記事を書いている時点で音出しから7時間程度経っています。エージングはまだなので第一印象としてのレビューです。環境は以下の通りです。

  • IsoTek EVO3 Nova
  • ifi Audio nano iGalvanic3.0
  • Audio Design DCA-5V mod (*)
    • *電源のコンデンサをFW・KW・PSCに交換
  • Woo Audio WA33
  • MYTEK Digital Manhattan DAC II
  • Focal Utopia NP

各機器の接続状態は以下の通りです。

試聴曲

試聴曲は以下の200曲を使います。

プレイリストの統計情報は以下URLのノートに簡単に記しました。性別やジャンルにかたよりがあります。Apple Musicで配信されている曲であれば追加できるので、何かおすすめがあればコメントをお願いいたします。
https://gitlab.com/rmc8/utopiaTest/-/blob/main/utopia_test.ipynb

レビュー

一聴してすぐに驚いたのは低音の量感と質です。開放型ですが低音がスカスカどころか充実した量感で曲全体をしっかり支えます。低音はやや柔らかめです。鳴らしているというより響かせるような感覚で、ガリガリに固く早い低音を鳴らしたいときには好みがでるかもしれません。ただ、音の固い・柔らかいはきちんと表現されており、全帯域・量感・質感との間でうまくバランスを取られているようにも感じました。

中音域も柔らかくかつ滑らかな質感です。特に女性ボーカルにピントがあっていて浮き上がり伸びやかに響きます。一方で相対評価として、男性ボーカルはやや腰が高く滑らかさもあり、低い声の表現がやや欠く場面もあるように思います。全くなっていないわけでもないですが、女性ボーカルの仕上がりと比較するともしかすると違和感を感じる場面があるかもしれません。その他、パリッとした音や乾いた音もなめらか目にでるので曲によっては物足りないかもしれません。

高音は派手さやうるささはないですが、低音に埋もれることもなく分離しており、ハイや余韻がしっかりと抜けていきます。誇張されたエッジ感もなく、しっかり鳴っているけど全体に馴染んでいます。中低域に負けず情報量もしっかりとあるので、詰まった感じや曇り・違和感などはありません。わかりやすい派手さ・特長のようなものは感じにくいですが、するめのように良さがわかってきそうな予感がします。

その他、音の分離は良好で全体の滑らかさやバランス感でそれぞれがうまくなじんでいます。定位は力むことなく自然に音像表現されています。リズム体の抜けもよく聞いていて心地良いです。ただ、低音のスピード感については好みによっては注意がいるかもです。
音場はHD8XXと比較しなければ十分に広く、一方で広がりっぱなしというわけでもなく広がった範囲内でまんべんなく音の密度やエネルギーをぶつけていくような力強さを感じます。録音状態が悪いと粗やすき間が目立ってしまいますが、充分に鳴らせる音源や環境があるとこのまんべんなさはかなりの強みになりそうです。

WA33との相性

D9200を例にすると、WA33の標準品はギャングエラーが強めにでて、アンプ側で出力レベルを下げ、DAC側でも出力レベルを下げてギリギリで左右の音量がとれます。この状態だと若干使いにくいですが、Utopiaではある程度音量の幅がとれるので使いやすくなりました。駆動力もなかなかあるアンプですが、駆動しすぎて低音が縮こまってしまうこともなく、自然な出音です。フォーカルの中音域の雰囲気ともマッチして、高音もシャリ付きもあまり感じられず、少なくとも相性が悪いということはなさそうです。一方で、まだ鳴るぞと余裕のようなものも感じられます。

少々脱線してしまいますが、WA33のElite Editionも気になってしまっているところです。ボリュームをALPS RK50に交換するだけでも効果がでそうで、システムの状態にあわせて音が変化するといわれるUtopiaの性質をひっそりと実感しました。

Pros and Cons

Pros

  • 解像度や音の分離など基礎性能の高さ
  • スペック表に載らない点も手抜きがない(音作りも装着感もよいです)
  • 女性ボーカルの伸びやかな浮き感
  • 真空管アンプとの親和性
  • 低音の量感
  • 全体での音のバランス感

Cons

  • 男性ボーカルの腰が高め
  • 機材との相性が難しい
  • 相性があるが価格が高い
  • 低音の質感・速度感
    • ヘッドホンというよりスピーカーっぽい
  • 改善されたか不明であるがドライバーが故障しやすい
    • 修理代も10万円と言われておりハイエンド帯なのでそこそこの費用が生じる
  • 高額だが優等生タイプでもなくこれ1本で全部をこなせるわけではない
    • 一方で、他のヘッドホンとの使い分けはしやすそうです

まとめ

高額で機材の相性や好みなどある程度出やすそうですが、個人的には好みの機種でエージングや環境の調整がとても楽しみです。開封直後と比べても中音域の粗さがほぐれてきており、聞き込みながら環境とともに育てていく楽しみがあります。また、Utopia本体や環境が整い次第、詳細なレビューをまとめます。