診断基準からひも解くナルコレプシーと特発性過眠症の違い

過眠症について

かんたんに過眠症とは起きていられないほどの強烈な眠気が生じてしまうことにより,職業・学業・日常生活などに支障が生じる状態を指します。正式な定義は下の通りです。

日中に過剰な眠気または実際に眠り込むことが毎日の様に繰り返して見られる状態で、少なくとも1ケ月間は持続し、そのため社会生活または職業的機能が妨げられ、あるいは自らが苦痛であると感じるものです。 ただし一回の持続期間が1ヵ月より短くても繰り返して過眠期がみられるものも含みます。
//jssr.jp/kiso/syogai/syogai01.html

引用における過眠症も人によって症状に違いがあり,症状の違いに合わせて分類もあります。どれも眠くなる症状で細やかな違いがあり,症状の解説におきましても専門用語も多くあります。そのために症状の違いの理解が難しいかもしれません。本稿では,診断のフロー(3つの条件)で簡単に症状の比較をします。過眠症についての導入編としまして気楽にご覧下さいましたら幸いです。

簡単な検査の手順

主にPSG検査とMSLT検査という2種類の検査があります。

(1)PSG検査で睡眠時無呼吸症候群や寝不足がないか,夜の睡眠状態を見ます。この睡眠状態で夜の睡眠異常により強烈な眠気が生じないであろうことを確認します。

(2)PSG検査で異常がなければMSLT検査をします。PSG検査で特別な異常がなく,異常な眠気が生じるということは過眠症である可能性があります。この検査では繰り返し寝て起きることを繰り返していく中で,過眠症に該当する眠気が生じているか・どの過眠症に分類されるのかといったことを診ます。

過眠症の分類ということでMSLTに着目して症状を比較します。

MSLT検査と診断のフロー

1.MSLT検査の概要

MSLT検査は2時間おきに20分ほど寝る検査です。時間をおいて反復して寝た時の脳波の状態をみて睡眠異常を確認します。この時に確認するのが(1)入眠潜時,(2)SOREMPの2点です。加えて(3)情動脱力発作の有無で症状を分類します。なじみのないワードかもしれませんので下に簡単に意味を記します。

(1)入眠潜時:覚醒状態から眠りにつくまでに要する時間
(2)SOREMP:入眠してから15分以内にREM睡眠が出現する回数
(3)情動脱力発作:喜怒哀楽に反応して生じる脱力症状のこと
REM(Rapid Eye Movement):急速眼球運動のこと。レム睡眠の時に生じる。

2.診断のフロー

hypersomnia_flow図におきましてはPSG検査や細やかな条件に付いて記述はなく,MSLT検査のみで簡便に分類をしております。ゆえに,便宜上〇〇(診断名)の可能性と記述します。

(1)入眠潜時が8分以内である

MSLT検査では最大で5回,ベッドに入り睡眠をとる検査をします。その時に,眠りにつくまでの平均時間が8分以内であるかどうかを診ます。脳波により判断するので本人は起きているつもりでも,実は寝ていたということもしばしばあるようです。
この基準に該当する場合には何らかの過眠症の可能性があると考えられます。該当しない場合には過眠症に該当しない何らかの要因により眠気が生じている可能性が考えられます。

(2)SOREMPが2回以上である

入眠してから15分以内にREM睡眠が生じた回数を記録して,その回数が2回以上だった場合にはナルコレプシーで特有の睡眠異常が生じているものと判断されます。2回未満の場合には特発性過眠症(原因不明の眠気が生じている状態)と判断されます。

(3)情動脱力発作を伴う症状である

ナルコレプシーの症状の1つとして情動脱力発作があります。しかし,この症状を伴わない亜流のナルコレプシーもありますので,情動脱力発作の有無でナルコレプシーのタイプをさらに分類します。脱力発作を伴う場合にはタイプ1,伴わない場合にはタイプ2に分類されます。

症状の比較

ナルコレプシー,特発性過眠症 の比較
診断基準より(1)入眠潜時が8分以内であることが過眠症の共通の特徴として表れています。そのほか,REM睡眠の発生回数が2回以上であるかでナルコレプシーと特発性過眠症,情動脱力発作の有無でナルコレプシーをタイプ1・タイプ2の2つに分けています。特発性仮眠症に関しても夜間睡眠が10時間以上か10時間未満かで分類もあり,過眠症を細かく4種類にわけています。(※)

どちらもすぐ覚醒状態から入眠状態に入りやすいですが,ナルコレプシーは短時間に頻繁に眠気が生じてすぐ目覚める。反対に特発性過眠症はゆっくりとしつこく長く眠気が生じて寝覚めが悪いといった特徴があります。治療方法は双方ともに薬物療法と生活習慣の改善ですが,眠気が生じた際の対処は症状の性質に合わせる必要がありそうです。本稿は症状の比較でありますが,ナルコレプシーと特発性過眠症の区別がつくことに役立てましたら幸いであります。

※ISCD-2の後に発表されたISCD-3では,夜間睡眠で特発性過眠症を2つにわけず,一括りに分類しています。臨床検査所見に差異が見られないことが理由です。長時間の睡眠を必要とする方にとっては日常生活への影響も考えられるため,また特発性過眠症は原因不明であるため,ISCD-2を参照することとしました。参考によろしくお願いいたします。

参考

新橋スリープ・メンタルクリニック 過眠症について
霧が丘つだ病院 睡眠呼吸検査 MSLT検査

・そのほか関連のページ
本稿の参考には用いていませんが,睡眠障害の理解に役立つページですので紹介いたします。
日本ナルコレプシー協会 ナルコレプシーはこんな病気
睡眠総合ケアクリニック代々木 睡眠障害とは
せせらぎメンタルクリニック 特発性過眠症の特徴と診断・治療法

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