【レビュー】Sony WH-1000XM6を購入しました

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概要
2025年5月30日に発売されたSony WH-1000XM6をSonyストアで購入しました。価格は59,950円です。本機のレビューをします。
WH-1000Xシリーズについて
WH-1000Xシリーズは2016年に初号機(WH-1000X)が誕生して2025年5月で9年を迎えたシリーズとなります。1992年に世界で初の民生用のノイズキャンセリングヘッドホンをソニーが発売をしており、その中でも最高級の位置づけのシリーズがWH-1000Xシリーズです。初号機が登場した2016年頃はAndroid端末に3.5mmのイヤホン用ジャックがついていたり、Walkmanなどのデジタルオーディオプレイヤーで有線で音楽を聴くことがまだ主流でした。スマートフォンから3.5mmのイヤホンジャックが取り除かれたりワイヤレス化が進み、ワイヤレスイヤホン・ヘッドホンで音楽を聞き、気づいたらイヤホン・ヘッドホンの内臓のマイクで通話することも当たり前の時代となりました。このように当たり前にノイズキャンセリングのヘッドホンが日常的に使われるよりも前から、消費者が利用できる最高級のヘッドホンとしてWH-1000Xシリーズは存在し、音楽鑑賞や通話や会議など音声を使った活動を広く支える存在となっています。2022年に発売されたWH-1000X5から3年ぶりに新しいモデルであるWH-1000XM6が発表され発売されましたのでレビューします。
WH-1000XM6が新しくなった点
WH-1000XM6で新しくなった点は主に3つあります。
- 世界的なサウンドエンジニア4人がWH-1000XM6のチューニングに関与して仕上がった機種である
- ノイズキャンセリングプロセッサーをQN3にして7年ぶりのアップグレードをした
- 360 Upmix for Cinemaモードによる立体的な音場への変換機能を追加
その他に細かい点として折りたたみ機構の復活などもあります。1つずつ見ると細かいアップデートで構成されているように見えますし正直インパクトは弱いと感じていました。ただ、実機を通して全体の完成度をみると意外と納得感を持てる内容だと思っています。詳細については後述のレビューで述べます。
開封
第一印象としてパッケージは思っていたより小さいと思いました。BoseのノイズキャンセリングのヘッドホンであるBose Noise Cancelling Headphones 700(NC700)を持っていて使っているのですが、パッケージの状態でNC700よりも小さく感じたことに少し意外性を感じました。
パッケージを開封すると持ち運び用のケースが入った状態を確認できます。マグネットで開封できるようになっているのですぐ使いやすいのも良いと思います。
開封すると折りたたまれた状態でヘッドホンが格納されています。折りたたみ前提で格納しないといけないですし、ヘッドバンドも短くしないと行けない点で少し手間がかかるとは思います。ただ、NC700よりも大きく見えるヘッドホンを折りたたむことによって小さく格納でき持ち運びできるのは非常にありがたいと思います。
折りたたんだ状態のWH-1000XM6とNC700で比較すると、小さくまとまっている様子が確認できます。
ヘッドホン本体の右側にUSB Cの充電端子があります。左側に電源(+ペアリングボタン)、ノイズキャンセリングの切り替えボタンがあり、3.5mmのイヤホンジャックが搭載されています。付属品として有線用に両端が3.5mm3極のプラグがついたヘッドホンケーブルもあります。バランス接続には対応していないと思いますので、基本的にはワイヤレスで使うと良いと思います。ノイズキャンセリングをつけていても30時間は連続で稼働できるようなので、どう頑張ってもあまり有線を使うことはない(避けたい)と考えています。
レビュー
ノイズキャンセリングヘッドホンとしての性能は高く非常に実用的だと思います。一般消費者の立場としてはサウンドエンジニアの方を存じ上げてはいなかったのですが、音のバランスは非常に良く無難に使える音色と性能だと思います。ノイズキャンセリングの性能もNC700よりも明らかに高いのでNC700の価格が4万円程度だったことを思うと、相対評価として6万円は納得感があると思っています(6万円超えるかもしれないと思っていたので価格面でも頑張って収めたのかと想像をしています)。細部について確認をしましょう。なお、ヘッドホンを20時間程度鳴らした状態でのレビューとなります。
低音
低音は重低音までしっかり鳴りますが量感に過不足はなく曇りやのっぺりとした鳴り方はしません。中庸的な鳴り方をしていると思いますが個人の感覚としてはわずかにソリッド(硬め)な質感で音の立ち上がりの良さと全体のバランス感の調和を意識しているのかと想像しています。BoseのNC700だと低音ののっぺり感や解像度の低さで聞いていてもつまらないと感じていたので、その点で比較しても音質面での満足感はあります。ただ、同社が出しているSONY ULT WEAR WH-ULT900Nのように低音に特化した機種ではありませんので、イコライザーで量感を調整できるとはいえ低音の質感については好みに合うか確認はしたほうが良いかと思います。
中音
中音もやはり中庸的でウォーム感もクール感もなく聞きやすいです。女性ボーカルも男性ボーカルもニュートラルに聞きやすく適度にツヤ感もあり、一方でフラットな聞こえ方はします。低音とは異なり固さも柔らかさのような癖はわたしの耳では感じられず無難な音色だと思います。素っ気なさや色気のなさといったことはまったく感じないですが、男性ボーカルや女性ボーカルのそれぞれに特化したグルーブ感やツヤ感があるわけでもないので無難にアーティストの表現を反映させていると思います。ジャズとかもグルーブ感や独特の空気感は薄めでただ音楽を聞いているような感触です。音楽鑑賞の目的で使用し、かつ聴く音楽に偏りがある場合にはここにつまらなさを感じないかが注意がいるかと思いますが、多種多様な音楽を聞いたりミーティングや英語学習、Audibleの音声を聞いたりする場合にはこの無難さがあることによって色々な用途で不満はなく使えるのかと思います。ただ無難と言っても色味はちゃんとあるので塩梅のよい調整で、4人のサウンドエンジニアの影響もここに出ているのではないかと考えています。
高音
高音はエッジのキツさやレンジの狭さを感じることはありません。音の余韻をある程度感じることができ聞いていて疲れる高音ではないです。ただ、密閉型で樹脂系のハウジングなので音の抜け感もとくにないのでメタル等の音源でドラムセットの爽快感や高音のリズム感を感じるわけではありませんし、ボカロ曲やアニソン等で特有のSE音やキラキラ感が前には出てきません。開放型のような高音の抜け感、木や金属のハウジングのような密閉型としての特色があったりするわけでもないので中音と同様に特定のジャンルに特化した特性を持っているわけではないと思います。必要十分な抜け感と繊細さはあるので詰まって聞こえることはないと思います。
解像度
音の全体のバランス感がよく解像度もばらつきがないと思います。全体を通して見通しの良い音で分離して音が聞こえるけど音楽としては破綻がなくまとまって聞こえます。なので特定の音域が曇って聞こえるなどのバランス感の欠如はなく使いやすい性能だと思います。趣味で音響をやっている方でなければ音質面では十分に感動できる性能はあると思います。NC700と比較してものっぺり感や曇りを感じはしないのでハイエンドのオーディオのほうが音質が良いとしても嬉しい誤算でした。
ノイズキャンセリング
NC700と比較しても頭が抜けて優れていると思います。夏であれば扇風機やクーラーを動かすかと思います。窓を開けると風が吹く音、車が走ったときに発生するタイヤの音、雑踏などの細かい雑音、空気清浄機の空気音など細かい音が日常に溢れているかと思いますがそれらの細かい音はしっかりとカットされます。人の声や大きめの音はじゃっかん耳が詰まったかのような聞こえ方で聞こえはしますが音楽を流すと、そのような音が外で流れているのかわからないぐらいには聞こえません。なので勉強や音楽鑑賞、ミーティングなどに集中しやすくなると思います。少なくともノイズキャンセリングの性能や機能を使用したときの体験はNC700よりは優れています。とはいえ何も聞こえなくなることもないですし、何も聞こえなくなってもそれはそれで危ないです。ノイズキャンセリングについてキャンセリングの塩梅や音の聞こえ方を実機でなるべく体験しておくと良いと思います。
装着感
折りたたみ機構のおかげもあり頭や耳にしっかりフィットして、小さくなる以外にも折りたたみ機構の効果を実感しています。一方でまだ使用を開始したばかりであるからか側圧が強く感じており長時間つけたときに耳の後ろや耳の下部に圧迫感を感じて若干疲れた感じがします。重さの問題はないと思うので側圧に慣れていないと思います。装着感に悪さは感じないですが長時間つけて使用するとなると側圧による圧迫感が集中を阻害する要因になってはいます。パッド内はある程度深さがあるので耳自体がヘッドホンに当たって痛いことはありません。パッド自体も柔らかさがあり十分に耳を塞いでフィットしてノイズキャンセリングも機能はしているので、側圧による圧迫感のみが気になっています。
360 Upmix for Cinemaモード
こちらは好みによるとは思うのですが声が広ろがってなめらかに聞こえて立体感が感じられるモードです。ドルビーのような立体音響技術と似たようなものだと感じています。こちらは私はとくに魅力を感じなかったイコライザーよりもさらにわかりやすく音質や音場が変わって映画の世界観に没入しやすくなりますので、ノイズキャンセリングと組み合わせて映画を見る用途に良いのかと思います。スピーカーを使わずに映画館のような音響の雰囲気を楽しめる点では手軽で使いやすいかと思います。音楽鑑賞では使うことがないですが映像作品を見るときに気まぐれで使って見るかもしれません(音の雰囲気が明らかに変わるので気分が変わると思います)。
全体を通しての感想
ノイズキャンセリングのジャンルで見ると完成度が高く、音質もノイズキャンセリングの性能にも満足しています。雑音をカットした上で曇りのない良い音を流せることは音を使ったさまざまな活動の満足度を高く引き上げてくれると思います。音楽鑑賞の観点で見るとサウンドエンジニアの協力もあって個性が強く前に出てこないものの非常にバランスの良い音です。ワイヤレスヘッドホンはワイヤレスで音声をヘッドホンに送り、受け取った音をDACやアンプを通してドライバーに流し音を発する仕組みです。そのためエンジニアが意図した音を鳴らしやすく、バッテリーが消耗する問題がありますが音の完成度の意味ではシステムとしての完成度が高いと思います。WH-1000XMはそこにサウンドエンジニアが協力してくれているので特定のジャンルに特化することはないにしても、何も考えずに優れたバランスの音をノイズキャンセリング機能も併せて得られるところに大きな価値があると思います。ソニーや世界的なサウンドエンジニアの力がない状態で、システム全体で音の調和を取り修正していくことは難しいので、そこが完成した状態のヘッドホンが得られる点、加えて解像度など基本的な性能も6万円以内で十分に確保できている点で評価ができる機種だとわたしは思います。
とはいえ6万円は高価ですし前の機種のWH-1000XM5であれば4万円とWH-1000XM6よりも2万円安く変えます。ここまでの完成度が不要であればWH-1000XM5も選択肢として十分にありえると思います。
WH-1000XM6による変更は細かいものもありますし、4人のサウンドエンジニアの協力を売りに出しているあたりについても魅力を感じてはいませんでした。ただ、実際に使ってみてシステム全体の利便性や仕上がりを体験すると、ヘッドホン全体としてはグレードアップしていることを実感できるのではないかと思います。
まとめ
WH-1000XM6は音楽鑑賞の観点では特定のジャンルに特化した音の表現はありませんが、無難に色々な音源・目的に対応できる懐の深さはあります。またノイズキャンセリングの性能もBoseのNC700と比較しても明らかに高く本機が発売されている時点では、最高級機としてのベストバイだとわたしは思っています。音楽鑑賞の目的だと人によってはつまらなさや特徴のなさに不満を感じることもあるとは思いますが、ノイズキャンセリングヘッドホンで作ったシステムとしては完成度が高く、発売直後の6万円程度の価格設定でも納得感が得られました。高額なノイズキャンセリングヘッドホンが必要になった際にはぜひ選択肢の1つとして検討いただくと良いかと思います。