『物価高・円安はもう止められない! 政府と日銀がひた隠す日本経済の不都合な真実』を読んだ
2026年5月31日
💡 Summary
藤巻健史氏の著書を読み、日銀の当座預金と利上げのジレンマや債務超過リスクなど、日本経済の抱える「ほぼ詰み」の構造を整理しました。利上げによる付利支払いや国債含み損の拡大は日銀を債務超過に追い込むため、大幅な利上げは実質的に不可能です。補助金や減税を求めるポピュリズムと、円の価値希釈による事実上のデフォルト懸念を指摘。個人ができる資産防衛策として、米ドル(MMF)への移行、オルカンや純金、さらには暗号資産(ステーブルコイン)での分散保有の有効性と、円を妄信しない生存戦略の重要性を考察しました。
昨日、物価高・円安はもう止められない! 政府と日銀がひた隠す日本経済の不都合な真実を購入し、本日読み終わりました。数時間で読めるボリュームでありながら、日本経済や財政についての深い考察に触れられる、非常に刺激的で楽しい読書体験でした。
著者の紹介と「オオカミ少年」の真実
本書は、日銀が抱える巨額の国債含み損や利上げによる当座預金への付利支払い増から、大幅な利上げが不可能な構造を「不都合な真実」とし、ハイパーインフレに備えてドルや暗号資産等での資産防衛を提唱する一冊です。
著者の藤巻健史氏は、2000年代初頭の1ドル=80円台だった超円高時代から一貫して円の危機を発信し続けている人物です。今となっては懐かしい当時の超円高下でも変わらず警鐘を鳴らし続けていたため、世間からは「オオカミ少年」と呼ばれることもあります。マクロ経済における最悪のシナリオ(ハイパーインフレなど)を発信しているため、「いつそうなるんだ」と突っ込まれることも頻繁にあります。
しかし、私は以下の3点において、世間の評判よりも藤巻氏の知識と経験の方を信用しています。
- 発信の内容にブレがないこと
- 異次元緩和のツケや打ち手のなさなど、構造的な要因によって実際に警鐘の内容(危機)に近づいていること
- 仮に最悪のシナリオが起こった場合の対処方法が低コストであり、期待値として利益(資産防衛)になること
政府、日銀、国民、世界経済と、登場人物たちの利害が複雑に絡み合い、「何かを立てればどこかが立たない」というがんじがらめの環境において、藤巻氏の目には日本経済が「ほぼ詰み」の状態に映っているようです。
日銀が直面する「利上げのジレンマ」とB/Sの歪み
実際に、昨日も考えた「利上げ」のトピックはまさにその典型です。利上げを実行すれば企業や銀行、速度を増す国の借金(国債の利払い)の負担が増えます。一方で、利上げを見送れば日本円に対する信用の揺らぎからさらなる円安が進み、生活コストが上昇します。
日銀の政策金利は昨年の12月に0.75%に上昇し、2026年内には1.0%になるだろうと言われています。問題はその後の利率をどうしていくか、そして国債の利回り上昇や、万が一株価が急落した場合に「日銀のバランスシート(B/S)」がどうなってしまうかです。まさに危ないバランスの紐の上に立たされているように思えます。
日銀決算 保有国債の含み損が45兆円規模にhttps://t.co/KnHeXDfc06 #nhk_news
— NHKニュース (@nhk_news) May 27, 2026
報道にある通り、日銀が保有している国債の含み損は45兆円規模にまで達しており、現在は日銀が持っているETFの含み益でなんとか相殺できている状態のようです。国債の買い入れを減らし、ETFの売却も進めてはいるものの、国債利回りが上昇すれば国債の損失はさらに膨らみます。また、金利上昇によって投資の魅力が下がれば、同時に株安(ETFの利益減少)を招くリスクもあります。
そうなった時、日銀のB/Sが完全に債務超過に陥るシナリオは現実味を帯びてきます。その債務超過の理由や解消方法を問われたとき、対外的に説明できるような材料を彼らは持ち合わせていないのではないか、と私は思っています。
片山財務大臣が個人向け国債の販促に積極的であるようですが、この状況ではとても購入したいとは思えません。ETFの価格が維持できているうちは良くても、ひとたび金融ショックが起こってしまった場合に日本や世界がどう対応するのか、非常に気がかりです。
ポピュリズム政治と「事実上のデフォルト」
目を政府や国民に向けてみると、物価上昇による生活の苦しさから、補助金や減税を求める声ばかりが目立ちます。しかし、その原資はすべて国債(借金)です。2026年3月のイラン戦争によるオイルの供給減少では、ガソリンに補助金を出して需要の抑制をしなかったように、我が国は基本的には放漫で、将来より目先の消費を優先する傾向があります。
先進国の中で生産性が低く、成長もあまりしていないのに、「増税は反対、でも行政サービスはどんどん受けていきたい」という状態なのですから、構造に歪みが出るのは無理もありません。
「日本国債はすべて日本円で発行される円建て債券であり、発行体である日本政府がデフォルト(債務不履行)することは起こり得ない」という言説がよくなされます。理屈の上では確かに円を刷り続ければデフォルトはしないでしょう。しかし、円を刷れば刷るほど円の価値は希釈されます。それは買い手からすれば「事実上のデフォルト」と同じではないでしょうか。
ポピュリズムで国民や政治が動き、日銀は独立しておらず政府に従う構造になっているように見える現状では、財政の改善に失敗した場合、三者は一蓮托生となって崩れるのではないかと想像してしまいます。
個人ができる資産防衛を考える
だからこそ藤巻氏は、資産の防衛方法として「円をドルに変えること」を提唱し、特にドル建てMMFの利用を推しています。
私もドルは保有しているのですが、つい最近、手持ちの米ドルを外貨定期預金に回したため、現時点でMMFの利用はできていません。MMFであれば外貨預金と違って分別管理(保護)の対象となりますし、資金のロックもないため、ロックが明けたらぜひ利用したいと考えています。
本書ではそのほか、暗号資産のセルフカストディなども挙げられています。ただ、暗号資産は値動きが大きいため、実用性を考えると、Tangemウォレットを導入した時の日記にも書いたようなUSDCなどのステーブルコインでの所有が良さそうです。現物の純金を持つことも選択肢ですが、保管コストなどを考慮すると、私の中では暗号資産の方がしっくりときています。
また、投資信託の「オルカン(オール・カントリー)」も大部分が海外資産なので、日本円と切り離す意味では優秀です。ただ、オルカンやMMFは「日本の証券会社などの金融機関」に紐づくものであるため、真の有事の際にどこまで価値を保持・引き出しできるかという点では、現物の純金や(分散型ウォレットでの)暗号資産の方に分があるかもしれません。
仮に奇跡的に日本経済がV字回復した場合には、これらの防衛策は不要(あるいは為替差損)になります。しかし、長期保有のメリットがあり、仮にドルで為替差損が出たとしても、ハイパーインフレによって円が紙屑になるリスクと比べれば微々たるものです。期待値として、資産の一部を他の資産クラスに分散しておく価値は十分にあります。
おわりに
藤巻氏の懸念するハイパーインフレ的な事象が本当に起こるかどうかは、私にはわかりません。しかし、コストプッシュ型のインフレが起こっているのは確かであり、円安も着実に進んでいます。
日々の生活には日本円が必要不可欠ですが、「日本円が当たり前に使えない世界」も絶対に来ないとは言い切れません。日本円を妄信せず、適切な資産分散を行いながら、企業の活動を応援したり、自身の身を守ったりして、これからの時代も平和に暮らせるよう頑張りたいと思います。